国際栄養概論

こんにちは。食物栄養学科の石川です。COVID-19の流行が、特に大阪では勢いを増していますが、今週から前期の授業が始まりました。

今年度から国際栄養履修モデルが開始され、第一弾として早速火曜日に国際栄養概論の第1回目の授業がありました。1年生対象の選択科目ですが、1年生の約半数が受講する盛況ぶりでした。この授業は、国際と名がついている通り、単なる栄養学概論とは異なり、世界の食文化や料理を知るきっかけを提供するものです。世界の食や文化を知るためには、人類の進化と食の歴史(いつの時代にどんな食べ物を食べてきたのか)を知る必要があり、火の使用に始まる料理の発展とも関連しています。また、世界の食が宗教と密接にかかわっていることは、ハラール(イスラム教)やカシュルート(ユダヤ教)の例を見ても明らかであり、日本人になじみの深い仏教も元々は肉食を禁じていました。地球規模で人々が移動する現在において(一旦停滞していますが)、日本人の食や風習だけ知っていれば良いということではないでしょう。

現在はアメリカが世界経済の中心を担い、アメリカ型資本主義の発展に伴って大量の工業化加工食品が世界中を席巻しています。日本を含め、ファストフード全盛の時代です。その一方で、健康的な側面から、また動物愛護の観点から、さらに持続可能な食の観点から、菜食主義やスローフードなど地球にやさしい食への原点回帰の波が起こりつつあります。自分のことだけでなく、他者や自然にとって良い食を考える食の利他主義を意識し、実践していくことは、アグロエコロジーの発展や食品ロスの削減、ひいては温室効果ガス排出量の減少や土壌の保全につながります。

世界の食を知ること、食の歴史を知ることは、人口が急増する今後の地球上の人類にとって、持続可能な食の生産と食の消費のあり方を自分自身の問題として考える良い機会になると確信しています。マイクロソフトのビル・ゲイツは温室効果ガス削減を理由に人工肉開発に莫大な投資をしています。現在一部の地域で残る昆虫食は、我々のすぐそこまで来ているかもしれません。

国際栄養概論は、単に世界の食や料理を知るだけでなく、派生する問題からSDGsを考え、今から自分たちに何ができるのかを考えていく大変奥深いコンテンツになっています。食と栄養のエキスパートである管理栄養士の一人でも多くが、食の生産・流通・消費などの一連の流れや六次産業化に関心を持ち、現在の食の問題に真正面から向き合う姿勢を身に着けることを期待しています。

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